中国でも議論沸騰、AIロボットが詠う詩に創作性はあるか?

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人口知能(AI)が生成した創作物は、著作権法により保護されるのか?
この問題は現在の日本の知財業界で熱い話題の1つですが、中国でもそれは同様のようです。
2017年5月19日、北京のマイクロソフト(アジア)インターネット工学院が開発したAI搭載ロボット「微軟小氷」が、詩集を正式に出版しました。これは1億人のユーザーが小氷に教えた喜怒哀楽などの感情を10章の詩を通じて表現した作品で、100%AIが創作した人類初の詩集とのことです。
小氷は1920年以降の現代詩人500名以上の作品を基に、1万回のトレーニングを経て、自らの文体を生み出しました。その腕前はかなりのもので、実は出版以前に複数のペンネームで数々のウェブサイト上に詩を公開していたところ、誰にもAIであることを見破られなかったそうです。
高い創作性を持つ作品を生み出している小氷、これからも意欲的に執筆活動に取り組んでいくことでしょう。そうなると問題になってくるのが、「小氷の作品は著作物なのか、著作権法によって守られるのか」という点です。

今年4月に行われた法大知産力フォーラムの席上で、北京市高級裁判所の謝裁判官は、「現在、AIの創作能力は基本的にディープラーニングによるもので、使用しているデータは人間が機械に与えているものであり、AIの創作の源泉は既存データを新たに並べ替えたに過ぎず、意識を持った主体による思想の表現とは言いがたい。このため、著作権法でAIの著作権を保護することはできないだろう」と述べました。
また中国政法大学法律大学院の費教授は、「AIの法律問題においては人が主体となるべき。AIそのものは人と利益を争うものではないため、解決すべきはAIの保有者とその他の人の利益の分割の問題である。」と見解を示しています。

なお日本では、「知的財産推進計画2016」中で、AIによって生み出された創作物と現行の知的財産権の関係について下図のように纏められています。

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※「知的財産推進計画2016」より引用

現在の知財制度においては、AIが自律的に生成した生成物は、「思想又は感情を創作的に表現したもの(著作権法第2条第1項)」ではないため著作物に該当せず、著作権も発生しないと考えられています。しかし、上掲の表のようにAI生成物と人間の手による創作物を見分けることが一般的には困難であることから、AI創作物に対する保護の必要性など、AI創作物の出現に対応する知財システムの構築が求められています。

AIのビジネス適用の可能性が広がるにつれ、著作権法上の問題もさまざまな角度から生じてくるでしょう。引き続き日中両国の動向を注視していきたいと思います。

(日本アイアール A・U)